今年の冬、ここ伊那では例年に比べ雪の少ない日が続きました。大人にとっては時に不便な雪も、子どもたちにとっては空から届いた特別な「贈り物」です。そんなキラキラとした朝の登校風景を切り絵に収めたいと思い、筆を執りました。
舞台に選んだのは、見慣れた伊那北駅前の歩道橋。白銀の世界に包まれた静寂の中、子どもたちの鮮やかなコートと弾む歌声が、街に温かな息吹を吹き込みます。文章と共に、雪の冷たさと子どもたちの手のぬくもりが伝わればと思います。

雪の朝 抱えられた雪の玉
……伊那市 伊那北駅前歩道橋……
夜中から降り続いた雪は、いつもの駅前の景色をすっかり塗り替えていました。アスファルトも看板も、すべてが真綿に包まれたような、まぶしい白銀の世界です。いつもなら小中高生の賑やかな声が飛び交う駅前のこの場所も、今朝ばかりは雪が音を吸収し、時間が止まったような静寂に包まれています。そんな静かな朝の光景の中、鮮やかなコート姿の子ども達が一人、また一人と歩道橋を降りてきました。登校の時間です。
歩道橋を降りて学校に向かう一人の男の子の手元に、大きな雪の塊がありました。両手で大事そうに抱えるその姿を見つけ、後ろから歩いてきた女の子が、弾んだ声で駆け寄りました。
「わあ、すごい!○○くん、まんまるで大きな雪玉だね」
不意に声をかけられた男の子は、誇らしげに鼻を赤くして笑いました。
「でしょう。歩道橋の手すりの端からずーっと手ですくって来たら、こんなになったんだ」
「学校まで持っていくの?」
女の子が目を丸くして尋ねると、男の子は腕の中の雪玉をさらにぎゅっと力を込めて抱えました。
「もちろん。これで遊ぶんだよ」
二人の楽しそうな会話が、冷たく澄んだ空気の中に溶け込んでいきます。静まり返っていた雪の朝に、子供たちの等身大の活気が小さな波紋のように広がっていきました。