上伊那農業高等学校の卒業式を題材とした切り絵作品を制作し、新聞に掲載いただきました。作品に込めたのは、三年間使い古した制服をまとい、誇らしげに校舎を後にする生徒たちの「今」この瞬間の輝きです。泥に触れ、命を育む農業高校ならではの日々を経て、大きく成長した彼らの姿。そんな我が子の門出を温かく見守るご家族や、厳しくも優しく支えた先生方の想いを、ひと刃ひと刃刻むようにして形にしました。
「当たり前の毎日が消えてしまう寂しさ」と、それ以上に膨らむ「未来への希望」。レンズに向かって最高の笑顔を作る彼らの、言葉にならない感謝と決意を感じていただければ嬉しいです。

卒業式を終えて
……南箕輪村 上伊那農業高等学校……
式典を終えた玄関口には、早春の柔らかな日差しが降り注いでいます。校舎から出てくる生徒や保護者の波。あちこちで花束が揺れ、三年間使い古した制服が今日ばかりはどこか誇らしげで、そして少しだけ寂しそうに見えます。
ふと校舎の先を見渡せば、実習で汗を流したビニールハウスが佇んでいます。
「ついに終わっちゃったね。あそこのビニールハウス、夏場はすごく暑かったけど、今はなんか………離れるのが変な感じするわ」
一人の生徒が名残惜しそうに呟くと、隣の友人が深く頷きました。
「本当だよな。暑い時は文句も言ってたけど、明日からもう来なくていいって言われると、逆に落ち着かないっていうか」
土に触れ、命を育てた日々。喧嘩したり笑い合ったりした教室。もう明日から、この坂道をのぼって登校することはありません。進路への夢や希望はあっても、それ以上に「当たり前だった日常」が消えてしまう寂しさがこみ上げてきます。
「卒業式の看板の前で、並んで写真撮ろうよ。制服で撮れるの、マジで最後だから。………あれ、○○君、 目が赤いよ! 泣いてんの?」
「うるせえ、花粉だよ! ほら、撮るぞ」
照れ隠しの冗談とシャッター音。恩師への感謝や、伝えきれない「さよなら」を抱えながら、彼らは何度も何度もレンズに向かって最高の笑顔を作ります。この瞬間の輝きが、明日からの新しい道を進む彼らの背中を、そっと押し出してくれるはずです。