長野日報新聞掲載の切り絵エッセイ「ふるさとの笑顔」より、駒ヶ根市・五十鈴神社の秋祭りと三国花火を描いた作品をご紹介します。
漆黒の夜空に降り注ぐ「大三国花火」の光と熱気を表現した切り絵作品です。黒い夜の闇と輝く花火の光を切り絵でどう表現するか、試行錯誤を重ねて制作しました。豪快な火のシャワーに湧く境内と、それを見上げる母子の温かな姿から、受け継がれる「ふるさとの祭り」の情緒を感じていただけたら幸いです。光と影が織りなす「ふるさとの笑顔」をぜひご覧ください。

光の滝の下で
……駒ケ根市 五十鈴神社の三国一煙火……
駒ヶ根市の大宮五十鈴神社で九月に行われる例祭。夜の深まりとともに境内の灯りが消え、漆黒の夜空に一筋の火が走ると、次の瞬間に大きな轟音が響き渡ります。頭上から降り注ぐ「大三国」の火の粉は、まるでまばゆい光の滝のようです。天から降り注ぐ激しい火柱は境内全体を神聖な光で照らし出し、観客の歓声とどよめきが夜の森にこだまします。古くから「世界一」の誇りを込めて「三国一煙火」と称され、氏子たちが年番区ごとに幾月もかけて準備し、神前に捧げてきた特別な奉納煙火の姿です。
火の粉が舞い散る渦中では、腹掛け姿の「競い隊」が「わっしょい」「おいしょ」と声を張り上げ、まといを掲げて勢いよく駆け回っています。厄を払い神々へ感謝と祈りを捧げるその勇姿は、激しい熱気と神聖な覚悟に満ち溢れています。
その迫力ある情景を見守る親子の姿がありました。
「わあ、すごい! お母さん、火の雨が降ってるよ。ちょっと怖いけど、すごく綺麗」
輝く瞳で頭上を見上げながら、男の子が声を弾ませます。母親は優しく微笑み、子どもの背中にそっと手を添えながら応えます。
「本当だね。あれは『三国一』と言ってね、私たちの町が誇る特別な花火なんだよ。あの火を浴びて、みんなの平和や無病息災を神様にお祈りしているの。大きくなったら、あなたもあの火の中に立つかもしれないね」
「えっ…… ぼくも大きくなったら、あの中に入ってみたい!」
子どもの瞳には、驚きと憧れがきらきらと輝いています。燃え上がる三国一の花火は、神様に捧げる祈りであるとともに、地域の人々の心を一つに結び、ふるさとの記憶を未来へ届ける大きな光なのです。