10月の秋空のもと、元気に開催される運動会。 熱気あふれる「綱引き」の様子を描いた切り絵作品と、それにまつわる物語です!
一番前で必死に踏ん張る子どもたちと、熱血指導(?)の先生が繰り広げる、感動とクスッと笑えるドラマです。勝負を超えて全力を尽くす子どもたちの爽やかな姿を、ぜひ作品と一緒にお楽しみください。

綱引き
「ばんざーい! ばんざーい!」
赤組のみんなと空高く手を突き上げ、飛び上がって喜ぶのは、一番前で太い綱を握りしめる一年生の葵(あおい)ちゃんだ。
試合前の赤組の陣地。大将の浦野先生は「十二対十一で白が勝っているけれど、二度勝てば逆転できるぞ!」と熱く語りかけ、赤旗を大きく振って「オー!」と声を合わせた。勢いそのままに、赤組は見事一回戦をつかみ取った。
運命の二回戦。葵ちゃんが一番前で綱を持ち上げると、目の前にいる白組の仲良し・陽菜(ひな)ちゃんとパッと目が合った。葵ちゃんが目くばせをすると、陽菜ちゃんは『今度は負けないよ!』と言わんばかりの表情を返してきた。
パンッ! ピストルの合図で引き合いが始まった。浦野先生は必死で赤旗を振りまわし、大声援を送る。葵ちゃんも教わった通り体重を後ろにかけて踏ん張るが、勝負は動かない。子どもたちの体中の力が抜けそうになったその時、グラウンドから割れんばかりの拍手が湧き起こり、あまりの熱戦に自然と起きた拍手が、子どもたちの疲れを一瞬で吹き飛ばす。
再び全身の力を込めた瞬間、一気に白組へと引きずり込まれ、勝負が決まった。悔しいはずなのに、全力で戦った白組の姿に葵ちゃんは自然と拍手を送っていた。万歳をする陽菜ちゃんと目が合うと、陽菜ちゃんは照れくさそうにコクリとうなずいた。
「よし、私の指導と旗振りでこんな熱戦になったかな!」心の中で自分の大将ぶりに自己満足しながら座席に戻った浦野先生。しかし、隣の先生からクスッと笑い混じりに言われてしまった。
「浦野先生、先生の方が力が入っちゃって、旗の振りと掛け声、全然合ってなかったですよ」
それを聞いた浦野先生は、ハッと苦笑いした。大人が思う以上に、子どもたちは自ら声を掛け合い、力を尽くして最高の熱戦を生み出していたのだった。勝負を超えて全力を尽くす子どもたちの姿は、どこまでも爽やかだった。