半沢川には伏流水が湧き出し、わさび田や水芭蕉が生育しています。ホタルの季節の少し前に現地を訪れると、地域の方が草刈りをしていました。そして、清流の川には野菜の皮が浮いていました。お話を聞くと、蛍のエサになるカワニナ用に野菜や果物、朴の葉っぱなどを与えているとのこと。こうした普段の手入れのおかげで、夏には多くのホタルが飛び交う光景が見られるということがよくわかりました。



半沢のホタル
……南箕輪村 田畑 半沢川……
段丘崖から湧き出る豊かな伏流水が注ぎ込む半沢川。この清流には水芭蕉やワサビが生育し、自然の美しさが際立ちます。
田畑神社近くを流れる半沢川にホタルの季節がやってきました。夜の帳(とばり)が下りると多数のホタルが舞い上がり、訪れた人々からは感嘆の声が上がります。静寂の中に響く川のせせらぎと真っ暗な夜空に浮かぶホタルは、まさに幻想的な光景です。ここは人や車の通りが少ないため、静けさを楽しみながらホタルの舞いを堪能することができます。
昭和初期にはこの地域でもホタルが乱舞していたといいますが、いつの間にかその姿は消えてしまいました。しかし二十年ほど前に再びホタルが姿を現し、以来「田畑半沢を愛する会」の皆さんが大切に環境を守り続けてきました。この会は三十年前から地域の自然保護活動に取り組んでおり、ホタルの保護もその一環です。こうした努力のおかげで、今では多くのホタルが再び乱舞するようになりました。
半沢を訪れると、草刈りや整備をしている会員の方の姿を見ることができます。ホタルのエサとなるカワニナにはキャベツやリンゴの切れ端などが与えられており、清流には多くのカワニナが生息しています。地元有志の協力で毎年「田畑半沢ほたる祭り」が開催されていて、地元で愛されるこの祭りは人々を魅了しています。
期間中は半沢脇の村道約二百メートルが通行止めになります。そして村道には手作りのあんどんが並べられ、訪れた人々を温かく迎えています。
清涼な水が湧き出る河岸段丘と、周囲を大木に覆われた半沢で乱舞する無数のホタル。その光景にひととき心を奪われます。この静寂と美しさが織り成す風景は、訪れる人々にとって忘れられない体験となることでしょう。