上伊那は生産量日本一を誇るアルストロメリアの産地です。そのアルストロメリアを栽培されていて、花の品評会で最高賞の農林水産大臣賞の受賞もされた矢野さんのハウスを取材させていただいて、作品を制作しました。







アルストロメリア
……伊那市 美篶……
肌を突き刺すような寒さの中、アルストロメリアを栽培している農家さんを訪れました。早朝から始まる摘み取り作業に間に合うよう、足早にビニールハウスへと向かいます。ハウスの扉を開けると、外の冷気とは打って変わって暖かな空気に包みこまれ、色とりどりのアルストロメリアの蕾が私の目に飛び込んできました。すでに摘み取りは始まっていて、市場に出荷するためこれから咲きそうな蕾がついた茎を丁寧に抜き取っていきます。曲がっていたり茎が細かったりするものは商品にならないので、後で良い茎が生えてくるように間引かれます。
上伊那はアルストロメリアの栽培で全国一の有名な地域です。冬場でも晴天が多く夜は冷え込む気候が、この花にとって最適な環境を提供しているのだそうです。
「光合成を促進し花をしっかりと育てるために、ハウスに設置されたカーテンを天候に応じて開閉し、適切な光量を確保しているんですよ」
と農家の方が説明してくださいました。夜間の冷涼さが花に休息を与える重要な役割を果たしているのだとか。こうした繊細な管理が、高品質のアルストロメリアを育む秘訣であることが伺えます。
収穫された花は敷地内の選果場に運ばれ、そこで一つ一つ手際よく等級分けされ、束ねられ、箱詰めされます。この一連の流れは十時頃までには完了し、農協を通じて全国へと出荷されていくそうです。これらの作業は毎日続きます。農家の方は、
「植物に休みはないですからね」
と苦笑しながらも、手をかけた分だけ美しい花が育つ喜びを語ってくださいました。その言葉には、長年の経験と深い愛情が込められていました。

訪問を終えハウスを後にすると、朝日がビニールハウスを照らしその背後には雪をかぶった中央アルプスが美しく映えていました。農家の方の日々の努力と自然の恵みが生み出す花々の美しさを目の当たりにし、改めてアルストロメリアの奥深さと魅力を感じることができました。