
無量寺の節分行事を切り絵で表現するため、1月の穏やかな日差しの日に現地を取材しました。無量寺は箕輪町の小高い丘に佇む静かな古刹で、境内からは伊那谷やアルプスの景色が広がります。歴史ある本堂や貴重な文化財、そして春には桜が咲く自然豊かな環境が印象的でした。節分当日の賑わいを想像しながら、どの構図がこの寺の魅力と節分の想いを伝えられるか考え、取材をしました。

豆まき
……箕輪町 無量寺……
「ぼく、今日は豆を拾うんだ」
小さな男の子が、期待に満ちた瞳で母親に話しかけました。
「頑張ってね」
母親は微笑みました。
箕輪町の東山にある無量寺。小高い丘の上に佇むこの寺は多くの文化財を有し、四季折々の美しい花と伊那谷の風景を一望することができる、静かで厳かな場所です。この寺では、古くから節分の豆まきの伝統が受け継がれてきています。
本堂の前に裃姿の年男年女がずらりと並び、いよいよ豆まきの開始です。
「鬼は外!福は内!」
威勢のいい掛け声とともに、空高く舞い上がる豆。男の子も他の人達と一緒に豆を拾おうと、必死に手を伸ばします。
しかし、背の高い大人や他の子ども達との競争はなかなかに厳しく、何度か豆をキャッチできそうになるものの、あと一歩のところで他の手に掴まれてしまいます。それでも男の子は諦めずに、豆が降ってくる方向へ何度も何度も駆け寄ります。
そんな時、大きなお兄さんが豆をキャッチしようとした手を開けて、小さな男の子の目の前に豆を落としました。慌てて豆を拾い上げた男の子は、満面の笑みを浮かべています。その様子を見守っていたお兄さんも、そっと微笑んでいます。
豆まきが終わると、男の子は母親のもとへ駆け寄り、
「見て見て、豆拾えたよ!」
自慢げに見せました。
「良かったね。福豆と言って、今年がいい年になるんだって」
母親は優しく声をかけ、男の子の頭を撫でました。
明日は立春。寒い冬から少しずつ春が近づいてくるように、男の子の心にも温かな希望が芽生えたようです。
無量寺の豆まきは単なる行事にとどまらず、地域の人々にとって大切な伝統です。子どもから大人までみんなが一つになって福を呼び込む、そんな温かい光景が毎年この寺院で繰り広げられています。