伊那谷ではこの季節になると白いそばの花があちこちで見られるようになります。
いかにも信州伊那谷らしい風景と感じで、こうした風景が昔からあっ
たのだろうと思ってしまいます。しかし、そばは稲が育つような豊かな土地ではなく、もともとはやせた畑につくられたものです。ところが今は減反政策もあり、田んぼに、そばを栽培しているので、昔とは違う風景なのでしょう。「そばの自慢はお里が知れる」と言われ、そばがとれると自慢するのは、米をつくることができない貧しいところと言うことになるという意味です。
そのそばの花を切り絵にしてみました。じっくり花を見るとひとつひとつ美しいつくりになっています。この花はきっと今も昔も変わらないことでしょう。信州出身の一茶にこんな句があります。
「そば国のたんを切りつつ月見かな」
月見の席でたとえ貧しい土地の出身と分かってもそばの国だよと胸を張るという句です。