友人の校長先生の中には、先を見通していくつかの校長講話を用意している立派な校長先生もいらっしゃいます。私もそうありたいと思いながら、いつもぎりぎりになっている始末でした。
夏休みを迎える一学期の終業式の校長講話では、「長い夏休みだからこそかけがえのない体験をしてほしい」そんな話をしたいと思いながらも、内容が決まらずにいました。その時、廊下の窓から教室のベランダを見ると、花をつけ始めた朝顔がたくさん並んでいて、喜んでのぞき込んでいる一年生の姿が目に入りました。『朝顔は昔から夏に愛された花だ。でも日が昇ると咲き始めるのか、それとも……。そうだ、朝早く起きてあのベランダの朝顔を調べてみよう。身近なことでも調べてみると発見があり、かけがえのない経験となる』そんな話はどうだろうと思いつきました。
見通しが立ったものの、すぐに実行に移すことができずに次の週初めになりました。窓からベランダを見て驚きました。先週まで一杯に並んでいた朝顔の鉢が数個しかないのです。夏休みを迎えるにあ
たり、「休み中は家に持ち帰って観察できるように、お家の方に都合がつく時に学校に来て持ち帰っていただきたい」というお便りが担任の先生から出たので、週末に多くの鉢が持ち帰られたのでした。「しまった、あの残りがなくなる前に調べないといけない」翌日朝3時に起きて学校に駆けつけました。まだ暗い校内の廊下を抜けベランダに駆けつけると、まだ花は開いていませんでした。「よかった」と思い、そばに座りこんで朝顔のつぼみの観察を始めました。花がゆっくりと開く様子を見ることができました。子ども達に話すために来たのですが、すっかり花の開く様子に心を奪われてしまいました。花が開ききり、時計を見ると5時少し前、すっかりあたりは明るくなっていました。何とか調べることができ、終業式には切り絵のうちわや風鈴とともに、夏の涼を感じるものとして愛されている朝顔の話をすることができました。


