校長講話や地域に出かけての講演等で、今まで延べ100回ほどお話をしてきました。なになにしなくてはならないというような教訓的な話にならずに、自分で考えて行動できるきっかけになればと、切り絵を使いながらお話ししてきました。気が付くと写真のように山ほどの切り絵となりました。ここでは校長としての最後の2つの講話をご紹介します。
今までの講話はこちらからご覧いただけます。
最後の校長講話
先日6年生を送る会がありました。6年生は1から5年生の感謝の気持ちが伝わって「うれしくなりました」と言っていました。ではこの「うれしい」は人間のどこで感じるのでしょう。そう、脳で感じるのですが、その脳は3つの脳からできているのだそうです。
1つめは、脳の一番真ん中にある「ヘビの脳」。ここは、ものを食べたり、息を吸ったり、おしっこをしたり、眠ったりするのに使われ、生きていくためになくてはならない部分です。ヘビやトカゲなどには、この脳しかないので、「ヘビの脳」と呼ばれています。
2つめは、「ネコの脳」。「ヘビの脳」のまわりにあって、気持ちや心をコントロールします。ここが働かないと泣いたり、笑ったり、怒ったり、喜んだりすることができません。この部分は、ヘビやトカゲにはありません。犬や猫や牛までが持っている脳なので、「ネコの脳」と呼ばれています。
3つめは、一番外側にある「ヒトの脳」です。ここは、覚えたり、考えたり、話したり勉強したりするのに使われるます。
この部分は、人間だけしか持っていないので、「ヒトの脳」と呼ばれています。
人が悪口を言ったり、いじわるをされるとノルアドレナリン
という薬が出ます。これは毒ヘビの次くらいの強さの毒があり、悪口やいじわるの度に少しずつ出ているのです。そして、それで最も傷つく脳は気持ちを感じるネコの脳より、生きるための、ヘビの脳が傷ついてしまい病気になったり、生きる意欲が弱くなってしまいます。
反対に何かできたとかいいこと人の役に立つことをすると脳はエンドルフィンという薬を出します。この薬には、「あなたはとても大切な人なんだよ」「生きていていいんだよ」と感じてヘビの脳が太るのです。
そこで皆さんに3つお願いがあります。1つめはわたしたちは、勉強さえできればとか、ついついこのヒトの脳だけが大事と考えがちです。しかし、3つの脳は関係しています。なにかできようになるとうれしくなります、頑張って生きていこうという希望も湧きます。つまり、そんなことが大事なのです。
2つめは友達の良さやいいところを見つけてあげる、声をかけるということです。「あなたはとても大切な人なんだよ」それが友達に生きる意欲を育てます。
3つめは「自分は駄目だな」と思うことあるよね。そういうふうに反省することも大事だけれど、それ以上に、「ぼくは頑張れるんだ、友達もそう言っている、先生もそう言ってくれている」「あれっ、私っていいかも」「ぼくってけっこうやるじゃん」そんな気持ちで、これからもやって行くことがとっても大事なのです。そんな気持ちでこれからもやっていきましょう。
卒業式式辞
今卒業証書を手渡しました。私は卒業証書というと忘れられない思い出があります。ここに昭和13年3月23日とある古い卒業証書があります。これは先生のお父さんの卒業証書です。先生のお父さんは90才で3年前に亡くなりました。農業一筋にやってきた口数の少ない人でした。でも、近所からは浦野さんの畑は雑草がないとか、浦野さんの田んぼは良く稲が育っていると言われるくらい農業を一生懸命やった人でした。お父さんが亡くなった後、お父さんの机や身の回りを見たら、びっくりしたことに何もないのです。お父さんは自分が亡くなることを見越して、ひとりで少しずつ片付けをしていたのです。ただ1つだけ残っていたものがありました。それは引き出の中にあったこの小学校当時の尋常小学校のこの卒業証書だったのです。
皆さんも大きくなって中学高校あるいは大学に行き、また、社会に出て働きます。そうした何年も経験することを人生といいます。人生を重ねるほど、学んだ小学校 またふるさとというのはなつかしくなるといわれます。そんな思いも込めて、卒業した学校を母校といいます。
お父さんは90年生きてきて、ふるさとの母校の卒業証書だけは言葉にならないくらい懐かしく当時の学校や先生や友達や家族、ふるさとを思い出して処分できずに残しておいたのだろうなあと思い、涙が出てきました。
昔の卒業証書と同じように皆さんに渡した卒業証書もここに番号があります。この辰野西小学校の卒業生番号といって本校の卒業生の中で皆さんが何番目かという番号です。最後に受け取った○○さんで11862番目の卒業生となります。
ここには割り印とって、学校に残してある大事な卒業生台帳の番号と証書の番号があわして押してあり、2度と出せないことになっています。皆さんに渡した卒業証書は母校辰野西小学校を卒業した証なのです。
こちらのステージを見てください。ひまわり学年の皆さんにと思って切り絵をつくりました。でも、この中の2枚は校長先生がはじめて先生になった37年前にはじめてつくった大きな作品です。どれか分かりますか?この雀です。今見るとぎこちないところがいっぱいあります。そして、今年御世話になった辰野町に感謝を込めて何日かかけてこんな絵をつくりました。それから先生は今日まで切り絵をつくってきました。まだまだ満足するものはつくれませんが1つの事をこつこつとやることで少し見える世界が変わりました。これからも続けていきたいと思っています。
これは誰だか分かりますか。そうピョンチャンオリンピックのスピードスケートで金メダルを取った小平奈緒さんと高木美帆さんです。小平さんも高木さんも前回までのオリンピックでは目指す成績が出なかったり出場できなかったりして、挫折を味わいました。
小平さんは前回のオリンピックの後一人で日本を離れスケートの強いオランダに行きました。住んでいたのは牧草地にぽつんとあり「まるでアルプスの少女ハイジの家」のようだったそうです。練習も厳しかったことはもちろんですがにオランダ語で話ができないといけないと「三回同じ言葉を聞いたら絶対に覚える」と書き出したノートは五冊にもなったそうです。
高木さんの家の壁には「継続は力なり」と書かれた紙が貼られているそうです。自分たちのスケートのために働いている両親を見て、中1から新聞配達を始めると、朝4時に起きて、北海道のいてつくような寒さの中、雪が降ればリュックに新聞を詰め、1軒1軒歩いて配ったそうです。体力をつけるため5キロ走ってから登校し、学校が終わればリンクへ向かうということを高校が終わるまで続けたそうです。
私の大事にしている言葉に一事専念(ひとことせんねん)と言う言葉があります。皆さんが5年生の国語で習った吉田兼好という人が書いた徒然草に出てくる言葉です。
一生のうちで自分に最も大事だと思う事を誰に何を言われてもこつこつとそのことに励むことが大事だといういみです。
小平さんはオランダに行って大丈夫?といわれ、高木さんはオリンピックにもう出られないんじゃあ等と言われたそうですけれど 自分の大事にしたいスケートを信念を持って続けてきました。その結果金メダルを得ることができたのです。先生のお父さんは農業を、先生はそんなに力はないですが切り絵を 一事に専念し続けてきました。
皆さんはこれから打ち込みたい1つの事を持っていますか? なければ これから、勉強でもスポーツでも他の事でも自分の一事をを決めだし、こつこつと努力していってほしいと思います。その先にはきっと 明るい希望ある未来がやってきます。
皆さんが歌ってきた私も大好きな校歌があります。最後には、
希望に輝きすすみゆくとあります。
まさに中学に向かって希望に輝いて精一杯生きていくと皆さんのことでもあります。
自分のやるべき事を見定め 希望に繋げていきましょう。