夕立 「先生、帰りの会早く終わらせてね」 しょうた君が話しかけてきました。 「どうして」 「西高のお姉さんに傘を返さなくちゃいけないんだよ」 「どういうこと」 「昨日、学校帰りに夕立があったでしょう。あいちゃんとめぐみちゃんと一緒だったんだけど、『うそっ、傘持ってない』って三人とも雨降るなんて思ってなかったし、家まではまだあるし、困って、途中のバス停に飛び込んだんだ。でも、なかなか止みそうもないので、『もう濡れてもいい』って飛び出そうとしたら、後ろからにゅーて傘を持った白い手が伸びてきて『この傘貸してあげるよ、一本だけど』って西高のお姉さんが貸してくれたんだ。それで三人でその傘の中に入って帰ったんだ。三人だったから俺は少しおしりが濡れちゃったけどね。そのお姉さんにバス停で傘を返すように玄関であいちゃんとめぐみちゃんが待っているんだ」 「何時に待ち合わせなの」 「ええとね、三時半」 「大丈夫だよ。その時間には終わりにするね。やさしいお姉さんだね、しっかりお礼言わなきゃあ」 「うん、もちろん」 「さようなら」 帰りの挨拶が終わって、頭を上げるとしょうた君はすでに教室を飛び出すところでした。 続きを読む: IMG_6608