道祖神と福寿草
……辰野町 沢底……
辰野町沢底は山間に抱かれた集落で、古き良き日本の風景を色濃く残しています。印象深いのは、集落の最も奥に鎮座する永正二年(1505年)に遡る日本最古と言われている道祖神です。この神々しい存在は訪れる人々を静かに見守り、地域の歴史と文化の重みを伝えています。
ここ沢底地区は、南向きの土手に数え切れないほどの福寿草が咲き誇ることでも知られています。福寿草が雪を押しのけて顔を出し、黄金色に輝く花を咲かせています。それを見つけた男の子が歓声を上げました。
「きれいなお花、見つけたよ。お日様みたい!」
確かに、まるで太陽の光を地上に運んできたかのようでもあります。その声に応えるように、お母さんが優しく言葉を返しました。
「そうかもしれないわ。空から降ってきた特別なお花かもね。こうやって春を知らせてくれるのね」
福寿草の保護と育成に取り組む地域の皆さんのおかげで、訪問者は春の訪れを一層楽しむことができます。福寿草まつりの期間中は民家の裏手の土手が開放され、整備された小道を歩きながらこの黄金色の花を観賞できるのです。さらに地域で運営する入村ふれあいセンターでは、農産物や特産品の販売、湯茶の接待が行われ、訪問者を温かく迎えてくれます。
福寿草が咲く土手、歴史を感じさせてくれる道祖神、そして地域住民の方々の温かい心づかい。これらが相まって、訪れる人々に忘れられない春の一日を提供しています。地域を見おろす道祖神が嬉しそうにその様子を見守り続けているように感じます。