新聞に掲載された作品をいくつかご紹介いたします。作品を2回クリックすると、エッセーをご覧いただけます。
![IMG_1541(2) 雪降り …… 宮田村 小学校前踏切…… 午後から降り始めた粉雪はこんこんと降り続き、あたり一面を白色に覆いました。そして街々は息をのむようにひっそりとしてきました。雪は空気の振動を吸収してしまうので、雪が降っていると音が遠くまで届きにくくなるそうです。街の営みの音も雪にかき消されているかのようです。 遠くから子ども達の声が響いてきました。下校時刻のようです。ちょうどその時「カンカンカンカン」と踏切が鳴り、電車がやってきました。その音に子ども達の声が一瞬途絶えました。 電車が通り過ぎたあとの踏切を子ども達が渡ってきました。帰る時間を待っていたかのような雪降りに、子ども達のテンションがいつもより上がっているようです。その声が遠のいていくと再び静かな雪降りに戻っていきました。 いつもの景色も雪の日は非日常の神秘な世界に引き込まれているように感じられます。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2023/04/img_15412.jpg?w=515&h=331&ssl=1)
雪降り …… 宮田村 小学校前踏切…… 午後から降り始めた粉雪はこんこんと降り続き、あたり一面を白色に覆いました。そして街々は息をのむようにひっそりとしてきました。雪は空気の振動を吸収してしまうので、雪が降っていると音が遠くまで届きにくくなるそうです。街の営みの音も雪にかき消されているかのようです。 遠くから子ども達の声が響いてきました。下校時刻のようです。ちょうどその時「カンカンカンカン」と踏切が鳴り、電車がやってきました。その音に子ども達の声が一瞬途絶えました。 電車が通り過ぎたあとの踏切を子ども達が渡ってきました。帰る時間を待っていたかのような雪降りに、子ども達のテンションがいつもより上がっているようです。その声が遠のいていくと再び静かな雪降りに戻っていきました。 いつもの景色も雪の日は非日常の神秘な世界に引き込まれているように感じられます。
![img_14751 レンゲツツジ ……宮田村宮田高原…… 標高1650mの宮田高原。見渡す限りの大自然の美しさに目を奪われます。残雪の中央アルプスの峰々と、朱色や黄色のレンゲツツジ、そして青い空と新緑の緑、これらのコントラストが鮮やかです。 高原のところどころに有刺鉄線の柵が残っていて、数年前まで夏の間に乳牛を放牧していたことを想像させます。昔、私の父も飼っていた大切な牛を麓からここに連れてきていました。 牛は夏の高温多湿が苦手です。標高が高く冷涼で程よい起伏があるこの場所は、草をはんだり寝そべったり自由に体を動かしたりと、牛にとっては大好きな場所だったことでしょう。夏が終わり家に戻ってきた牛がひと回り大きく健康的になったと、父が嬉しそうに話していたことを思い出しました。 レンゲツツジは葉に毒の成分があるので牛たちは食べません。放牧されている牛たちはレンゲツツジ以外の植物をムシャムシャと食べ続けるので、レンゲツツジは群落となっていきます。今では新しく植樹されたものも加わって、一面レンゲツツジの花に覆われるようになりました。 宮田高原の爽やかな風を全身に浴びながら、放牧されていた牛の気分を想像しました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2022/08/img_14751.jpg?w=354&h=331&ssl=1)
レンゲツツジ ……宮田村宮田高原…… 標高1650mの宮田高原。見渡す限りの大自然の美しさに目を奪われます。残雪の中央アルプスの峰々と、朱色や黄色のレンゲツツジ、そして青い空と新緑の緑、これらのコントラストが鮮やかです。 高原のところどころに有刺鉄線の柵が残っていて、数年前まで夏の間に乳牛を放牧していたことを想像させます。昔、私の父も飼っていた大切な牛を麓からここに連れてきていました。 牛は夏の高温多湿が苦手です。標高が高く冷涼で程よい起伏があるこの場所は、草をはんだり寝そべったり自由に体を動かしたりと、牛にとっては大好きな場所だったことでしょう。夏が終わり家に戻ってきた牛がひと回り大きく健康的になったと、父が嬉しそうに話していたことを思い出しました。 レンゲツツジは葉に毒の成分があるので牛たちは食べません。放牧されている牛たちはレンゲツツジ以外の植物をムシャムシャと食べ続けるので、レンゲツツジは群落となっていきます。今では新しく植樹されたものも加わって、一面レンゲツツジの花に覆われるようになりました。 宮田高原の爽やかな風を全身に浴びながら、放牧されていた牛の気分を想像しました。
![img_14731 残雪映す水鏡と田植え ……駒ケ根市 下平地区…… 駒ケ根市下平の広い田んぼに水が張られ、水面に映る中央アルプスに出会える季節がやってきました。天を突く残雪の中央アルプスを逆さに映し出す『水鏡』です。 その水田に苗が植え付けられていきます。まるでアルプスの中に入ってお田植えをしているかのようです。 そんな美しい景色に惹きつけられたかのように、どこからともなくツバメがやってきました。しばらくして急降下したと思ったら、ヒラリと急旋回してまた舞い上がりました。まさに『つばめ返し』。鮮やかな旋回です。ツバメは飛んでいる昆虫を空中で器用に捕まえて食べているそうです。人や農作物に被害をもたらす虫をたくさん捕まえてくれるツバメが、農家から大変ありがたがられたゆえんです。 この季節ならではの田園風景を望むことができました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2022/08/img_14731.jpg?w=207&h=331&ssl=1)
残雪映す水鏡と田植え ……駒ケ根市 下平地区…… 駒ケ根市下平の広い田んぼに水が張られ、水面に映る中央アルプスに出会える季節がやってきました。天を突く残雪の中央アルプスを逆さに映し出す『水鏡』です。 その水田に苗が植え付けられていきます。まるでアルプスの中に入ってお田植えをしているかのようです。 そんな美しい景色に惹きつけられたかのように、どこからともなくツバメがやってきました。しばらくして急降下したと思ったら、ヒラリと急旋回してまた舞い上がりました。まさに『つばめ返し』。鮮やかな旋回です。ツバメは飛んでいる昆虫を空中で器用に捕まえて食べているそうです。人や農作物に被害をもたらす虫をたくさん捕まえてくれるツバメが、農家から大変ありがたがられたゆえんです。 この季節ならではの田園風景を望むことができました。
![img_20211004_165114 赤そば ……箕輪町 赤そばの里…… 「わあっ、真っ赤っ赤」 木漏れ日が降り注ぐ山道を、お母さんに手を引かれてしばらく歩いてきた女の子が思わず叫びました。突然景色が開け、満開の赤そばが姿を見せています。 「すごい、赤いじゅうたんだね」 一緒に来たお母さんが言いました。山に囲まれた丘が一面赤く染まり、息をのむような絶景です。 「上まで行ってみようよ」 今度は女の子がお母さんの手を引っ張って歩き出しました。畑の上の方まで行って振り返ると、満開の赤そばの向こうに伊那谷と南アルプスの山々の景色を望むことができます。 「○○ちゃんのお家、あの辺りじゃないかな」 「えっ、どこどこ」 お母さんの指さす方向を背伸びしながら眺めています。 周りには多くの人々が思い思いに散策したり、カメラを向けたり、畑の間のベンチに座り休憩したりしています。晴天のこの日、目に映る赤い花畑は一層鮮やかで、人々を優しく包み込んでくれているようです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2021/10/img_20211004_165114.jpg?w=757&h=473&ssl=1)
赤そば ……箕輪町 赤そばの里…… 「わあっ、真っ赤っ赤」 木漏れ日が降り注ぐ山道を、お母さんに手を引かれてしばらく歩いてきた女の子が思わず叫びました。突然景色が開け、満開の赤そばが姿を見せています。 「すごい、赤いじゅうたんだね」 一緒に来たお母さんが言いました。山に囲まれた丘が一面赤く染まり、息をのむような絶景です。 「上まで行ってみようよ」 今度は女の子がお母さんの手を引っ張って歩き出しました。畑の上の方まで行って振り返ると、満開の赤そばの向こうに伊那谷と南アルプスの山々の景色を望むことができます。 「○○ちゃんのお家、あの辺りじゃないかな」 「えっ、どこどこ」 お母さんの指さす方向を背伸びしながら眺めています。 周りには多くの人々が思い思いに散策したり、カメラを向けたり、畑の間のベンチに座り休憩したりしています。晴天のこの日、目に映る赤い花畑は一層鮮やかで、人々を優しく包み込んでくれているようです。
![IMG_1036坂戸橋 (5) 桜 ………中川村 坂戸橋……… 「見て、きれい」 「桜の中に橋が見える」 親子連れが思わず声を出しました。坂戸橋の桜のトンネルと、両岸に植えられた桜が満開です。 天竜川にかかる坂戸橋は今から八十年も前にできた、当時は東洋一といわれた橋です。その頃の中川村は天竜川をはさんで二分されており、両側に分かれた地区の人々にとっては、川の東と西を結ぶ念願の橋だったそうです。完成を祝って橋の入口に植えられた桜が現在も美しく咲き誇っています。ここは今でも現役の交通の要所で、村の皆さんが大切に守っている橋でもあります。 「あの橋を車で通ろうよ」 天竜川の美しい清流としゃれたアーチ橋。そして満開の桜。ついついうれしくなってしまいます。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2021/08/img_1036e59d82e688b8e6a98b-5.jpg?w=323&h=473&ssl=1)
桜 ………中川村 坂戸橋……… 「見て、きれい」 「桜の中に橋が見える」 親子連れが思わず声を出しました。坂戸橋の桜のトンネルと、両岸に植えられた桜が満開です。 天竜川にかかる坂戸橋は今から八十年も前にできた、当時は東洋一といわれた橋です。その頃の中川村は天竜川をはさんで二分されており、両側に分かれた地区の人々にとっては、川の東と西を結ぶ念願の橋だったそうです。完成を祝って橋の入口に植えられた桜が現在も美しく咲き誇っています。ここは今でも現役の交通の要所で、村の皆さんが大切に守っている橋でもあります。 「あの橋を車で通ろうよ」 天竜川の美しい清流としゃれたアーチ橋。そして満開の桜。ついついうれしくなってしまいます。
![21-04-29-20-33-44-248_deco 田植えの頃 ………飯島町 七久保……… カンカンカンカン 「もうじき来るよ」 遠くの踏切の音が鳴り始めました。もうすぐ列車がやってきそうです。線路に向かって一人の子が走り出しました。 「お姉ちゃん、行こう」 男の子がお姉さんの手を引いて続きます。 ガタンゴトン ガタンゴトン 線路を揺らす音とともに、列車が姿を現しました。カーブを大きく曲がりながらこちらに向かってきます。そして、あっという間に手を振る子どもたちの間近を通り過ぎていきました。 飯島町七久保にある飯田線の大カーブは、中央アルプスの雄大な景色と列車を同時に眺めることができる、鉄道ファンには有名なお立ち台です。水が入った田んぼに映る列車と、残雪の中央アルプス南駒ケ岳の景色は、この季節ならではの素晴らしさで心を奪われます。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2021/04/21-04-29-20-33-44-248_deco.jpg?w=681&h=539&ssl=1)
田植えの頃 ………飯島町 七久保……… カンカンカンカン 「もうじき来るよ」 遠くの踏切の音が鳴り始めました。もうすぐ列車がやってきそうです。線路に向かって一人の子が走り出しました。 「お姉ちゃん、行こう」 男の子がお姉さんの手を引いて続きます。 ガタンゴトン ガタンゴトン 線路を揺らす音とともに、列車が姿を現しました。カーブを大きく曲がりながらこちらに向かってきます。そして、あっという間に手を振る子どもたちの間近を通り過ぎていきました。 飯島町七久保にある飯田線の大カーブは、中央アルプスの雄大な景色と列車を同時に眺めることができる、鉄道ファンには有名なお立ち台です。水が入った田んぼに映る列車と、残雪の中央アルプス南駒ケ岳の景色は、この季節ならではの素晴らしさで心を奪われます。
![img_20210813_081119 川遊び …………太田切川 こまくさ橋………… 「ひゃー、冷たい」 「こんなに濡れちゃった」 子どもたちはびしょ濡れになりながらも、ものおじせずに川の中に入っていきます。大きな石をピョンピョンと飛び渡って、川遊びに夢中です。 中央アルプスから流れ出るこの川の水はとても綺麗で、夏でも大層ひんやりしています。強い日差しの中で、この冷たさはたまらなく気持ちがいいのでしょう。 太田切川にかかるこまくさ橋。足元には美しい川が流れ、すぐ近くには中央アルプスを、また背後には南アルプスの山々を遠く望むことができます。雄大な山の景色、おいしい空気に清らかな水。子どもたちを虜にする魅力にあふれています。 「これはもう少し、遊んでいこうか」 子どもたちを連れてきたお父さんとお母さんが、川辺の大きな石に腰を下ろしました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2021/08/img_20210813_081119.jpg?w=399&h=278&ssl=1)
川遊び …………太田切川 こまくさ橋………… 「ひゃー、冷たい」 「こんなに濡れちゃった」 子どもたちはびしょ濡れになりながらも、ものおじせずに川の中に入っていきます。大きな石をピョンピョンと飛び渡って、川遊びに夢中です。 中央アルプスから流れ出るこの川の水はとても綺麗で、夏でも大層ひんやりしています。強い日差しの中で、この冷たさはたまらなく気持ちがいいのでしょう。 太田切川にかかるこまくさ橋。足元には美しい川が流れ、すぐ近くには中央アルプスを、また背後には南アルプスの山々を遠く望むことができます。雄大な山の景色、おいしい空気に清らかな水。子どもたちを虜にする魅力にあふれています。 「これはもう少し、遊んでいこうか」 子どもたちを連れてきたお父さんとお母さんが、川辺の大きな石に腰を下ろしました。
![IMG_6503 樹氷 「今度はゴンドラリフトに乗って一番上まで行くよ」 「わーい」 朝からのスキー教室で上手になったので、コーチからのご褒美なのでしょう。一番上まで行くことになり、子ども達は歓声を上げています。私も一番後ろから付いていきました。途中で降りずにゲレンデを眼下に見下ろすような一番上まで上がっていきました。 「さあ、ついておいで」 コーチの声と共に林間コースを子ども達は列になって喜んで滑っていきました。 「あれ、○○さんと△△さんかな。どうしたんだろう」 コースの途中で二人の子が立ち止まっています。 「どうしたの?」 近くまで滑っていって声をかけました。 「先生、見て上を。すごい綺麗だよ」 青空から降り注ぐ光を受けて、雪をかぶった樹氷がきらきらと輝いていました。思わずため息が出るほどの美しさです。 「本当だ、これを見て立ち止まっちゃったのか」 「うん、そうなの」 もう一度その美しさを見ようと上を見上げると、 『ゴツーン』 「じゃあね、先生」 雪玉を投げつけて、二人が逃げていきました。 「こらー」](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6503.jpg?w=399&h=257&ssl=1)
樹氷 「今度はゴンドラリフトに乗って一番上まで行くよ」 「わーい」 朝からのスキー教室で上手になったので、コーチからのご褒美なのでしょう。一番上まで行くことになり、子ども達は歓声を上げています。私も一番後ろから付いていきました。途中で降りずにゲレンデを眼下に見下ろすような一番上まで上がっていきました。 「さあ、ついておいで」 コーチの声と共に林間コースを子ども達は列になって喜んで滑っていきました。 「あれ、○○さんと△△さんかな。どうしたんだろう」 コースの途中で二人の子が立ち止まっています。 「どうしたの?」 近くまで滑っていって声をかけました。 「先生、見て上を。すごい綺麗だよ」 青空から降り注ぐ光を受けて、雪をかぶった樹氷がきらきらと輝いていました。思わずため息が出るほどの美しさです。 「本当だ、これを見て立ち止まっちゃったのか」 「うん、そうなの」 もう一度その美しさを見ようと上を見上げると、 『ゴツーン』 「じゃあね、先生」 雪玉を投げつけて、二人が逃げていきました。 「こらー」
![IMG_6619 紅白リレー 「コーナーを回って、赤が白にせまっています。さあ、どちらが勝つでしょう」 場内アナウンスも熱をおびています。運動会の最後を飾る紅白リレーです。抜きつ抜かれつのデッドヒートをくりひろげ、アンカーの六年生がゴールにせまります。一位の白と追い上げた赤がほぼ同時にゴールテープを切りました。 「……………」 あれほど盛り上がった応援もやんで、場内が一瞬シーンとしました。 「一位 赤」 場内がどっと沸きました。 競技が終わって、着順に選手が場内を一周します。選手のがんばりに拍手がわき上がっています。二位の旗を持った白のアンカーが目の前を通り過ぎました。 『あっ…』 涙を拭いた跡が頬に見えました。精一杯やったのです。その悔しさがきっと明日への糧になるはずです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6619.jpg?w=368&h=259&ssl=1)
紅白リレー 「コーナーを回って、赤が白にせまっています。さあ、どちらが勝つでしょう」 場内アナウンスも熱をおびています。運動会の最後を飾る紅白リレーです。抜きつ抜かれつのデッドヒートをくりひろげ、アンカーの六年生がゴールにせまります。一位の白と追い上げた赤がほぼ同時にゴールテープを切りました。 「……………」 あれほど盛り上がった応援もやんで、場内が一瞬シーンとしました。 「一位 赤」 場内がどっと沸きました。 競技が終わって、着順に選手が場内を一周します。選手のがんばりに拍手がわき上がっています。二位の旗を持った白のアンカーが目の前を通り過ぎました。 『あっ…』 涙を拭いた跡が頬に見えました。精一杯やったのです。その悔しさがきっと明日への糧になるはずです。
![IMG_6617 玉入れ 「ドーン」 ピストルがなって、最後の力を振り絞り、玉をかき集め、かごに向かって投げられた玉も地面に落ちました。子ども達は最初の位置に戻り座りました。 「ひとーつ、ふたーつ」 先生の声に合わせて玉を数え始めました。それに合わせてかごの中の玉を上に放り投げていきます。 「にじゅさん、にじゅし」 赤も白も玉がなかなか終わらない、接戦となりました。子ども達は息を飲んで見ています。『かごにはまだ玉残ってるかなあ』と心配な表情でドキドキしているのが伝わってきます。 「さんじゅご」 「あー」 ため息とも歓声ともしれないどよめきが起こって、白の玉が終わりました。 「さんじゅはち」 最後の赤の玉が、秋空に高く放り上げられました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6617.jpg?w=368&h=259&ssl=1)
玉入れ 「ドーン」 ピストルがなって、最後の力を振り絞り、玉をかき集め、かごに向かって投げられた玉も地面に落ちました。子ども達は最初の位置に戻り座りました。 「ひとーつ、ふたーつ」 先生の声に合わせて玉を数え始めました。それに合わせてかごの中の玉を上に放り投げていきます。 「にじゅさん、にじゅし」 赤も白も玉がなかなか終わらない、接戦となりました。子ども達は息を飲んで見ています。『かごにはまだ玉残ってるかなあ』と心配な表情でドキドキしているのが伝わってきます。 「さんじゅご」 「あー」 ため息とも歓声ともしれないどよめきが起こって、白の玉が終わりました。 「さんじゅはち」 最後の赤の玉が、秋空に高く放り上げられました。
![IMG_6611 花火 「昨日花火大会に、お父さんとお母さんと弟と行ってきたんだよ」 「どうだった?」 「近くで見たからすごかったよ。はじめにスターマインがドカンドカンと上がって、弟なんかびっくりしてお母さんの腕の中で泣いちゃったんだよ。それでもヒュードカン、ヒュードカンとくるんだよ」 「それで弟さんは大丈夫だったの」 「それがね、その後に尺玉って言う大きな花火が上がったの。強い光が空に光って開いた花火も大きかったけど、音がものすごくて、お腹に 『ドスーン』ときて、思わず「うわおーっ」と思った。そしたら弟はなぜだか泣き止んじゃったんだよ。」 「尺玉ってすごいね」 「空いっぱいに広がってすごい迫力だったよ。先生にも見せたかったな」 やはり、夏の花火は子ども達を夢中にさせる魅力があるようです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6611.jpg?w=334&h=522&ssl=1)
花火 「昨日花火大会に、お父さんとお母さんと弟と行ってきたんだよ」 「どうだった?」 「近くで見たからすごかったよ。はじめにスターマインがドカンドカンと上がって、弟なんかびっくりしてお母さんの腕の中で泣いちゃったんだよ。それでもヒュードカン、ヒュードカンとくるんだよ」 「それで弟さんは大丈夫だったの」 「それがね、その後に尺玉って言う大きな花火が上がったの。強い光が空に光って開いた花火も大きかったけど、音がものすごくて、お腹に 『ドスーン』ときて、思わず「うわおーっ」と思った。そしたら弟はなぜだか泣き止んじゃったんだよ。」 「尺玉ってすごいね」 「空いっぱいに広がってすごい迫力だったよ。先生にも見せたかったな」 やはり、夏の花火は子ども達を夢中にさせる魅力があるようです。
![IMG_6613 すいかの種 「先生、すいかの種を食べるとおへそから芽が出てくるって、本当なの?」 「えっ、どうして」 「昨日、兄ちゃんとすいかを食べたんだ」 「暑かったから、おいしかったでしょう」 「うん、とっても。でもはじめはゆっくり種を出して食べていたんだけど、兄ちゃんが『すいかの早食い競争しようぜ』って言うからやったんだよ。いちいち種を出していたら遅くなるから、種も一緒に食べちゃったんだよ。そうしたら、それを見ていたお母さんが『そんな食べ方したら、だめよ。すいかの種を食べるとおへそから芽が出てきちゃうよ』って言うんだよ。それで、芽が出てきたら大変と思って、気になってしまってさ……」 「種はあたたかい所におくと、芽が出てくるんだよね。おなかの中ってあたたかいしね」 「えっ」 「先生も子どもの頃、おへそから芽が出てくるとか、顔に黒いしましまができるって言われたなあ」 「それで、どうなったの」 「芽は出てこなかったよ。スイカの種はとってもかたいから、うっかり飲み込んでしまっても、消化されないで体の外へ出てくるみたいだよ」 「うわあ、良かった」 「でも、あまりもったいない食べ方をすると、すいかの種が怒っておなかの中に居座ろうとするかもよ」 「えっ……」](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6613.jpg?w=374&h=261&ssl=1)
すいかの種 「先生、すいかの種を食べるとおへそから芽が出てくるって、本当なの?」 「えっ、どうして」 「昨日、兄ちゃんとすいかを食べたんだ」 「暑かったから、おいしかったでしょう」 「うん、とっても。でもはじめはゆっくり種を出して食べていたんだけど、兄ちゃんが『すいかの早食い競争しようぜ』って言うからやったんだよ。いちいち種を出していたら遅くなるから、種も一緒に食べちゃったんだよ。そうしたら、それを見ていたお母さんが『そんな食べ方したら、だめよ。すいかの種を食べるとおへそから芽が出てきちゃうよ』って言うんだよ。それで、芽が出てきたら大変と思って、気になってしまってさ……」 「種はあたたかい所におくと、芽が出てくるんだよね。おなかの中ってあたたかいしね」 「えっ」 「先生も子どもの頃、おへそから芽が出てくるとか、顔に黒いしましまができるって言われたなあ」 「それで、どうなったの」 「芽は出てこなかったよ。スイカの種はとってもかたいから、うっかり飲み込んでしまっても、消化されないで体の外へ出てくるみたいだよ」 「うわあ、良かった」 「でも、あまりもったいない食べ方をすると、すいかの種が怒っておなかの中に居座ろうとするかもよ」 「えっ……」
![IMG_6618 虫の声 ♪………秋の夜長を、鳴き通す ああおもしろい、虫の声♪ 『虫の声』の歌を歌いました。ちょうど歌い終わった時 「あっ、本当に虫の声が聞こえるよ」 ◯◯さんの声に、みんなが一斉に耳を澄ませると、 「コロコロリー コロコロリー………」 と音楽室の窓の外から聞こえてきます。しばらく教室中がシーンとなって聞き入りました。 「あれ、聞こえなくなっちゃった」 「でも、よく聞くと他の虫の鳴き声もするよ」 静かに耳を澄ますと、遠くからも虫の声が聞こえてきます。 「先生、私たちの歌を聴いて、鳴いてるのかなあ」 「そうかもしれないね」 「じゃあ、もう一回歌おうよ」 伴奏を始めると、虫たちに聞こえるようにでしょう、教室の窓を開けて、しかも全員が窓の外を向いて歌い始めました。 その元気な歌声に、窓の外の虫たちはすっかり鳴きやんでしまったようですが…。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6618.jpg?w=172&h=254&ssl=1)
虫の声 ♪………秋の夜長を、鳴き通す ああおもしろい、虫の声♪ 『虫の声』の歌を歌いました。ちょうど歌い終わった時 「あっ、本当に虫の声が聞こえるよ」 ◯◯さんの声に、みんなが一斉に耳を澄ませると、 「コロコロリー コロコロリー………」 と音楽室の窓の外から聞こえてきます。しばらく教室中がシーンとなって聞き入りました。 「あれ、聞こえなくなっちゃった」 「でも、よく聞くと他の虫の鳴き声もするよ」 静かに耳を澄ますと、遠くからも虫の声が聞こえてきます。 「先生、私たちの歌を聴いて、鳴いてるのかなあ」 「そうかもしれないね」 「じゃあ、もう一回歌おうよ」 伴奏を始めると、虫たちに聞こえるようにでしょう、教室の窓を開けて、しかも全員が窓の外を向いて歌い始めました。 その元気な歌声に、窓の外の虫たちはすっかり鳴きやんでしまったようですが…。
![IMG_6614 花の水やり 「きれいに咲いてるねえ」 朝、学校花壇の水やりに来た子どもたちに声をかけました。 「ううん、昨日帰りの分が少しすぎたのかなあ。サルビアが水ほしがっているんだよ」 「えっ、そうなの」 「花の先が、少し元気ないでしょう」 「そうかなあ。よく分からないけど」 子どもたちは手早く用意をして水やりを始めました。水を受けてマリーゴールドやアゲラタムに囲まれてサルビアの赤が一層輝いています。 「ねっ、さっきとは全然違って、花が喜んでいるでしょ」 「なるほど」 そう言われれば、花も葉っぱも元気に開いてきたように見えます。毎日世話をしている子どもたちには、花の気持ちが分かるようです。この夏は暑くて雨もほとんど降らなかっただけに、きれいに花開いたのはこんな子どもたちのおかげです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6614.jpg?w=183&h=254&ssl=1)
花の水やり 「きれいに咲いてるねえ」 朝、学校花壇の水やりに来た子どもたちに声をかけました。 「ううん、昨日帰りの分が少しすぎたのかなあ。サルビアが水ほしがっているんだよ」 「えっ、そうなの」 「花の先が、少し元気ないでしょう」 「そうかなあ。よく分からないけど」 子どもたちは手早く用意をして水やりを始めました。水を受けてマリーゴールドやアゲラタムに囲まれてサルビアの赤が一層輝いています。 「ねっ、さっきとは全然違って、花が喜んでいるでしょ」 「なるほど」 そう言われれば、花も葉っぱも元気に開いてきたように見えます。毎日世話をしている子どもたちには、花の気持ちが分かるようです。この夏は暑くて雨もほとんど降らなかっただけに、きれいに花開いたのはこんな子どもたちのおかげです。
![IMG_6612 かき氷 「昨日、かき氷屋さんで、かき氷を食べたんだよ」 休み時間に○○君が、話しかけてきました。 「こう毎日暑いと、かき氷は最高に美味しいよね」 「でも、喜んで慌てて食べたせいか、頭がキーンと痛くなっちゃって、しばらく何もできなかったんだよ。どうして口の中に氷があるのに、頭が痛くなるの? 」 「どうも、冷たさの刺激が強すぎて、脳が混乱して、『口の中が冷たい』でなくて『頭が痛い』って間違って感じて、しまうみたいだよ」 「へえ、そうなんだ」 『キンコンカンコン』 休み時間終わりのチャイムが鳴りました。 「さて、算数の授業を始めるよ」 「なんか俺、頭痛くなってきた。何もできないかもしれない」 「何言ってるんだよ○○君。始めるよ」](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6612.jpg?w=180&h=254&ssl=1)
かき氷 「昨日、かき氷屋さんで、かき氷を食べたんだよ」 休み時間に○○君が、話しかけてきました。 「こう毎日暑いと、かき氷は最高に美味しいよね」 「でも、喜んで慌てて食べたせいか、頭がキーンと痛くなっちゃって、しばらく何もできなかったんだよ。どうして口の中に氷があるのに、頭が痛くなるの? 」 「どうも、冷たさの刺激が強すぎて、脳が混乱して、『口の中が冷たい』でなくて『頭が痛い』って間違って感じて、しまうみたいだよ」 「へえ、そうなんだ」 『キンコンカンコン』 休み時間終わりのチャイムが鳴りました。 「さて、算数の授業を始めるよ」 「なんか俺、頭痛くなってきた。何もできないかもしれない」 「何言ってるんだよ○○君。始めるよ」
![IMG_6502 梅もぎ 「先生、この梅あげるよ」 木の上から声がしました。学校の中庭に梅の木が3本あり、その梅の実を学級でもいでいたところでした。見上げると手が伸びてきて、黄色い梅の実を手のひらに落としてくれました。 「臭い嗅いでみて、桃みたいないい匂いだよ」 「本当だ。いい匂いだね。○○君は梅って聴くとすっぱいと思って口の中につばが出てこないかい。先生は梅干しのことが頭に浮かんで、今でも口の中に唾液が出てくるけど」 「全然、だってこれでおいしい梅ジャムと、梅ジュースをつくるんだよ」 「そうか。それは楽しみだね」 「できたら先生にもあげるね」。 『私など、小さな頃は常に食卓に酸っぱい梅干しがあり、おにぎりの具もお弁当も真ん中にはその梅干しが入っていた世代と、現代に生きる子どもとは違うのかもしれないなあ』と思いながら、手のひらの梅を嗅ぎました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6502.jpg?w=189&h=254&ssl=1)
梅もぎ 「先生、この梅あげるよ」 木の上から声がしました。学校の中庭に梅の木が3本あり、その梅の実を学級でもいでいたところでした。見上げると手が伸びてきて、黄色い梅の実を手のひらに落としてくれました。 「臭い嗅いでみて、桃みたいないい匂いだよ」 「本当だ。いい匂いだね。○○君は梅って聴くとすっぱいと思って口の中につばが出てこないかい。先生は梅干しのことが頭に浮かんで、今でも口の中に唾液が出てくるけど」 「全然、だってこれでおいしい梅ジャムと、梅ジュースをつくるんだよ」 「そうか。それは楽しみだね」 「できたら先生にもあげるね」。 『私など、小さな頃は常に食卓に酸っぱい梅干しがあり、おにぎりの具もお弁当も真ん中にはその梅干しが入っていた世代と、現代に生きる子どもとは違うのかもしれないなあ』と思いながら、手のひらの梅を嗅ぎました。
![IMG_6604 田植え1 「あめんぼだ」 「ゲンゴロウだよ」 「カエルだ」 「こっちにも」 土を耕して、水を入れた田んぼに田植えに来ました。その田んぼの中にいろいろな生き物がたくさんいて、しばしジーっと見つめている子ども達です。中でもカエルはいっぱいいて、子ども達が近くにいる昼間なのに鳴いているカエルもいます。 「先生、このたくさんのカエル達は どこからやってきたのかなあ」 「近くの林とか土手で冬をこして、田んぼに水が入ると卵を産むチャンスだから、やってくるんだよ」 「へえ」 「鳴いているのは、雄で雌を呼んでいるんだってよ。『おーい彼女、ちょっと僕のところに来ないかい』ってなかんじかな」 「えっ、そうなんだ」 「雌は『わっ、いい男』って気に入った雄がいると卵を産むんだよ」 「ふーん、それでゲロゲロって鳴いてるのか」 そんな話を聞いたせいかカエルの鳴き声をまねして 「ゲロゲロ、ゲロゲロ」 と言いながら、田植えが始まりました。 「あっ、○○ちゃんの足下にカエル。きっと『いい男』って飛んできたんじゃない」](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6604.jpg?w=498&h=353&ssl=1)
田植え1 「あめんぼだ」 「ゲンゴロウだよ」 「カエルだ」 「こっちにも」 土を耕して、水を入れた田んぼに田植えに来ました。その田んぼの中にいろいろな生き物がたくさんいて、しばしジーっと見つめている子ども達です。中でもカエルはいっぱいいて、子ども達が近くにいる昼間なのに鳴いているカエルもいます。 「先生、このたくさんのカエル達は どこからやってきたのかなあ」 「近くの林とか土手で冬をこして、田んぼに水が入ると卵を産むチャンスだから、やってくるんだよ」 「へえ」 「鳴いているのは、雄で雌を呼んでいるんだってよ。『おーい彼女、ちょっと僕のところに来ないかい』ってなかんじかな」 「えっ、そうなんだ」 「雌は『わっ、いい男』って気に入った雄がいると卵を産むんだよ」 「ふーん、それでゲロゲロって鳴いてるのか」 そんな話を聞いたせいかカエルの鳴き声をまねして 「ゲロゲロ、ゲロゲロ」 と言いながら、田植えが始まりました。 「あっ、○○ちゃんの足下にカエル。きっと『いい男』って飛んできたんじゃない」
![IMG_6610 巣立ち 「つばめが何か騒いでいるよ」 校舎の軒先につばめの巣を見つけて、子つばめが大きな口を開けて親から餌をもらっている姿を楽しみに見守ってきた子ども達ですが、今日はつばめの様子が違います。みんなでそっとのぞきました。 「あっ、雛が飛んだよ」 巣立ちの日がやってきたようです。一羽の雛が飛び立って、フェンスに止まりました。それに引きずられるように二羽の雛も飛び出しました。 「巣に残っているのは、一羽だけになっちゃった」 親鳥が巣に戻ってきて、羽をバタバタさせています。 「きっと、がんばれって言ってるんだよ」 皆の視線が一羽の雛に集まりました。けれどなかなか飛び立ちません。息を凝らして、しばらく見ていました。 「やったあ。飛んだあ」 最後の一羽も、すーと空に直線を描き飛び出しました。ただ、見守っていた子ども達の喜びの声が大きかったので、驚いてフェンスに止まっていた雛たちも一斉に飛び立ちました。心なしかフラフラとしながら、親鳥を追って行きました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6610.jpg?w=498&h=352&ssl=1)
巣立ち 「つばめが何か騒いでいるよ」 校舎の軒先につばめの巣を見つけて、子つばめが大きな口を開けて親から餌をもらっている姿を楽しみに見守ってきた子ども達ですが、今日はつばめの様子が違います。みんなでそっとのぞきました。 「あっ、雛が飛んだよ」 巣立ちの日がやってきたようです。一羽の雛が飛び立って、フェンスに止まりました。それに引きずられるように二羽の雛も飛び出しました。 「巣に残っているのは、一羽だけになっちゃった」 親鳥が巣に戻ってきて、羽をバタバタさせています。 「きっと、がんばれって言ってるんだよ」 皆の視線が一羽の雛に集まりました。けれどなかなか飛び立ちません。息を凝らして、しばらく見ていました。 「やったあ。飛んだあ」 最後の一羽も、すーと空に直線を描き飛び出しました。ただ、見守っていた子ども達の喜びの声が大きかったので、驚いてフェンスに止まっていた雛たちも一斉に飛び立ちました。心なしかフラフラとしながら、親鳥を追って行きました。
![IMG_64932 アサギマダラ 「やったあ」 ○○君が羽を広げてフジバカマにとまっているアサギマダラにそうっと近寄り、虫網で捕まえることができました。周りにいる子が駆け寄ってきました。 「うわあ、綺麗だね」 「かわいい」 「大きな羽だね」 教えてもらったように羽に油性ペンで場所や日付などを書いて、再び放しました。「渡り」をする蝶として知られるアサギマダラは、美しくて上品な蝶です。この細い体でこれから南に向かい沖縄や台湾まで千キロメートルも二千キロメートルも飛んでいくのだそうです。 「行ってらっしゃい」 「台湾まで気をつけてね」 子どもたちが声を掛けました。その言葉が通じたのか、子ども達の周りを一周して空高く飛び立ちました。それを見ていた○○君が言いました。 「でもさあ、アサギマダラって、台湾まで行って台湾の言葉わかるのかなあ」](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_64932.jpg?w=582&h=966&ssl=1)
アサギマダラ 「やったあ」 ○○君が羽を広げてフジバカマにとまっているアサギマダラにそうっと近寄り、虫網で捕まえることができました。周りにいる子が駆け寄ってきました。 「うわあ、綺麗だね」 「かわいい」 「大きな羽だね」 教えてもらったように羽に油性ペンで場所や日付などを書いて、再び放しました。「渡り」をする蝶として知られるアサギマダラは、美しくて上品な蝶です。この細い体でこれから南に向かい沖縄や台湾まで千キロメートルも二千キロメートルも飛んでいくのだそうです。 「行ってらっしゃい」 「台湾まで気をつけてね」 子どもたちが声を掛けました。その言葉が通じたのか、子ども達の周りを一周して空高く飛び立ちました。それを見ていた○○君が言いました。 「でもさあ、アサギマダラって、台湾まで行って台湾の言葉わかるのかなあ」
![IMG_6602 歯科検診 一年生になって初めての歯科検診。 「歯医者さんが、虫歯がないか見てくださるから、自分の名前を言ってから、大きく口を開けてみてもらうんだよ」 「はい」 「それでは、廊下に名簿順で並んびましょう」 いつも以上に、静かにさっと廊下に並びましたが、 『あれ、なんか少ないぞ。123……。あっ○○君がいない』 教室をのぞいてみると、教室の隅にうずくまっている男の子がいます。 「どうしたの、行くよ」 「ううん、いや」 どうも歯医者さんと聞いて、足がすくんでしまったようです。 「○○君、大丈夫だよ。痛くなんかないよ」 「………」 「それに、いやなことは早くやっちゃった方がいいよ。小学校に入った一年生はみんなやらなくちゃあなんだ。みんなが終わって最後にやるようにするかい」 「……最後はいや…」 やっと並んでくれて、保健室へ出発しました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6602.jpg?w=350&h=243&ssl=1)
歯科検診 一年生になって初めての歯科検診。 「歯医者さんが、虫歯がないか見てくださるから、自分の名前を言ってから、大きく口を開けてみてもらうんだよ」 「はい」 「それでは、廊下に名簿順で並んびましょう」 いつも以上に、静かにさっと廊下に並びましたが、 『あれ、なんか少ないぞ。123……。あっ○○君がいない』 教室をのぞいてみると、教室の隅にうずくまっている男の子がいます。 「どうしたの、行くよ」 「ううん、いや」 どうも歯医者さんと聞いて、足がすくんでしまったようです。 「○○君、大丈夫だよ。痛くなんかないよ」 「………」 「それに、いやなことは早くやっちゃった方がいいよ。小学校に入った一年生はみんなやらなくちゃあなんだ。みんなが終わって最後にやるようにするかい」 「……最後はいや…」 やっと並んでくれて、保健室へ出発しました。
![IMG_6606 アマガエル 「また雨が降ってきた」 窓の外を眺めて男の子がつぶやきました。ここ数日雨が続いていたのですが、今朝は雨は落ちていなくて外で遊ぶことができると楽しみにしていたところだったのです。そんな声にクラスの子ども達も窓に目をやりました。 「あれっ、あそこ見て、カエルがこっちを見ている」 ガラス窓の外側にアマカエルが張り付いています。子ども達が窓に駆け寄りましたが、そんなことお構いなしかのようにカエルは逃げることもなくガラスに腹を丸出しにしてくっついています。必死にしがみついているかと思いきや、まあるく凹んだお腹を吸盤みたいにガラスにくっつけて意外に平気な顔をしているように見えます。子ども達がその腹のあたりをまじまじと見ていると、 「わぁっ、こっち見た」 キョロリと目を動かしながら、顔をこちらに向けました。 「あっ」 次の瞬間、ぱっと跳ねたかと思うと窓際のアジサイの葉の上に見事に飛び乗りました。 「さようなら、またおいでよ」 「先生、あのカエル、私たちの勉強を見に来たのかなあ」 「そうかもしれないね」 雨の憂鬱さが窓に来たお客さんのおかげで少し和らいだようです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6606.jpg?w=192&h=243&ssl=1)
アマガエル 「また雨が降ってきた」 窓の外を眺めて男の子がつぶやきました。ここ数日雨が続いていたのですが、今朝は雨は落ちていなくて外で遊ぶことができると楽しみにしていたところだったのです。そんな声にクラスの子ども達も窓に目をやりました。 「あれっ、あそこ見て、カエルがこっちを見ている」 ガラス窓の外側にアマカエルが張り付いています。子ども達が窓に駆け寄りましたが、そんなことお構いなしかのようにカエルは逃げることもなくガラスに腹を丸出しにしてくっついています。必死にしがみついているかと思いきや、まあるく凹んだお腹を吸盤みたいにガラスにくっつけて意外に平気な顔をしているように見えます。子ども達がその腹のあたりをまじまじと見ていると、 「わぁっ、こっち見た」 キョロリと目を動かしながら、顔をこちらに向けました。 「あっ」 次の瞬間、ぱっと跳ねたかと思うと窓際のアジサイの葉の上に見事に飛び乗りました。 「さようなら、またおいでよ」 「先生、あのカエル、私たちの勉強を見に来たのかなあ」 「そうかもしれないね」 雨の憂鬱さが窓に来たお客さんのおかげで少し和らいだようです。
![IMG_6605 田植え 「田んぼには裸足で入るんだよね」 「そりゃ、そうさ」 登校してきた子ども達が話をしています。 「私、いやだなあ。足が汚れるでしょ、それにカエルが足に触ったりしたら……考えただけでぞっとしちゃうな」 「大丈夫だよ。汚れたら洗えばいいし、カエルなんかかわいいもんだよ。それよりひょっとしたらヘビが泳いでいるかもしれないぜ」 「えっ、脅かさないでよ」 クラス全員で田植えが始まりました。 「うわっ、ぬるぬる」 「歩けな~い」 はじめは泥の中に入るのをためらう子がいましたが、次第に慣れてきて、何度も苗を手にして植えていました。そういえばと思い、朝田植えをためらっていた○○さんに声をかけました。 「○○さん、田植えはどう?」 「なんか楽しくなってきちゃった」 鼻の頭に泥をつけながらにこにこと答えてくれました。子ども達には裸足に泥の感覚がなんともいえず気持ちいいようです。田んぼに入ると伝わってくる足に感じる冷たい水、柔らかな泥。そしてカエルやアメンボ等の生き物との出会い。頬を伝う春風や日差しのあたたかさ。田植えにはいろんな魅力が詰まっていて、子ども達は体全体で感じているようです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6605.jpg?w=182&h=243&ssl=1)
田植え 「田んぼには裸足で入るんだよね」 「そりゃ、そうさ」 登校してきた子ども達が話をしています。 「私、いやだなあ。足が汚れるでしょ、それにカエルが足に触ったりしたら……考えただけでぞっとしちゃうな」 「大丈夫だよ。汚れたら洗えばいいし、カエルなんかかわいいもんだよ。それよりひょっとしたらヘビが泳いでいるかもしれないぜ」 「えっ、脅かさないでよ」 クラス全員で田植えが始まりました。 「うわっ、ぬるぬる」 「歩けな~い」 はじめは泥の中に入るのをためらう子がいましたが、次第に慣れてきて、何度も苗を手にして植えていました。そういえばと思い、朝田植えをためらっていた○○さんに声をかけました。 「○○さん、田植えはどう?」 「なんか楽しくなってきちゃった」 鼻の頭に泥をつけながらにこにこと答えてくれました。子ども達には裸足に泥の感覚がなんともいえず気持ちいいようです。田んぼに入ると伝わってくる足に感じる冷たい水、柔らかな泥。そしてカエルやアメンボ等の生き物との出会い。頬を伝う春風や日差しのあたたかさ。田植えにはいろんな魅力が詰まっていて、子ども達は体全体で感じているようです。
![IMG_6600 前へ ならえ 「前へ ならえ」 「手を前の人の肩の高さまであげるよ」 「目は前の人の頭の後ろを見る」 一年生にとっては、入学して2ヶ月ほどです。学校生活にもようやく慣れてきたところで、運動会の練習となりました。はじめは戸惑っていましたが、回を重ねていくうちにきびきびとできるようになってきました。 「すごい。一発で上手にできたね」 指の先までピンと伸ばして、とても上手になってきました。『よしこのままの気持ちで、次の練習に移ろう』と指示を出そうと思ったちょうどその時、子どもたちの目の前をツバメがかすめるように飛んでいきました。 「あっ」 何人かの子どもがそれに気がついて声をあげました。『せっかく整列できていたのに、乱れてしまうかな』と不安に思って子どもたちを見ましたが、少しざわついた後すぐに元の姿に戻りました。整然と整列できた子どもたちは気持ちまでビシッとしているようです。 そう言えば、ツバメは幸福を運ぶ鳥だといいます。子どもたちのがんばりに感心してエールを送りに来てくれたのかもしれません。運動会での子どもたちの姿が楽しみになってきました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6600.jpg?w=172&h=243&ssl=1)
前へ ならえ 「前へ ならえ」 「手を前の人の肩の高さまであげるよ」 「目は前の人の頭の後ろを見る」 一年生にとっては、入学して2ヶ月ほどです。学校生活にもようやく慣れてきたところで、運動会の練習となりました。はじめは戸惑っていましたが、回を重ねていくうちにきびきびとできるようになってきました。 「すごい。一発で上手にできたね」 指の先までピンと伸ばして、とても上手になってきました。『よしこのままの気持ちで、次の練習に移ろう』と指示を出そうと思ったちょうどその時、子どもたちの目の前をツバメがかすめるように飛んでいきました。 「あっ」 何人かの子どもがそれに気がついて声をあげました。『せっかく整列できていたのに、乱れてしまうかな』と不安に思って子どもたちを見ましたが、少しざわついた後すぐに元の姿に戻りました。整然と整列できた子どもたちは気持ちまでビシッとしているようです。 そう言えば、ツバメは幸福を運ぶ鳥だといいます。子どもたちのがんばりに感心してエールを送りに来てくれたのかもしれません。運動会での子どもたちの姿が楽しみになってきました。
![IMG_6607 スイカ 「先生、スイカの種飛ばせる?」 ○○君が話しかけてきました。訳を聞くとお休みにおじいさんの家に行って、スイカを食べた時の話のようです。 「おじいちゃんがつくった、こんなにでかいスイカを、おばあちゃんが切ってくれて、みんなで縁側で食べたんだ。おじいちゃんはスイカを食べると、その後、種をプッと遠くまで飛ばすんだよ。僕も真似してやってみるんだけど、ポトって下に落ちるし、それを見てみんなが笑うんだよ」 「おじいちゃんすごいね。上手なおじいちゃんには飛ばし方を聞かなかったの」 「うん、聞いたんだけど、『慣れれば○○もすぐにできる』って言ってニコニコ笑っているだけなんだ。おばあちゃんも『スイカを食べにまたおいで』と笑っているだけだし……」 「そうか、おじいちゃんはスイカ飛ばしの名人なんだね。名人というのは、なかなか極意を教えてくれないものだから、これは○○君、またおじいちゃんの家に行ってスイカを食べて、やってみるってものじゃあないかなあ」 「やっぱりそうか。また、おじいさんの家に連れて行ってもらって、スイカ食べながらやってみるね」](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6607.jpg?w=172&h=243&ssl=1)
スイカ 「先生、スイカの種飛ばせる?」 ○○君が話しかけてきました。訳を聞くとお休みにおじいさんの家に行って、スイカを食べた時の話のようです。 「おじいちゃんがつくった、こんなにでかいスイカを、おばあちゃんが切ってくれて、みんなで縁側で食べたんだ。おじいちゃんはスイカを食べると、その後、種をプッと遠くまで飛ばすんだよ。僕も真似してやってみるんだけど、ポトって下に落ちるし、それを見てみんなが笑うんだよ」 「おじいちゃんすごいね。上手なおじいちゃんには飛ばし方を聞かなかったの」 「うん、聞いたんだけど、『慣れれば○○もすぐにできる』って言ってニコニコ笑っているだけなんだ。おばあちゃんも『スイカを食べにまたおいで』と笑っているだけだし……」 「そうか、おじいちゃんはスイカ飛ばしの名人なんだね。名人というのは、なかなか極意を教えてくれないものだから、これは○○君、またおじいちゃんの家に行ってスイカを食べて、やってみるってものじゃあないかなあ」 「やっぱりそうか。また、おじいさんの家に連れて行ってもらって、スイカ食べながらやってみるね」
![IMG_6596 メジロ 満開になった桜に誘われて、校庭に出て桜をながめていた時です。 「あれ、桜の花が動いているよ」 ○○くんの指さす方を見ると、確かに風にしては変な動きをしています。 「あっ、ちっちゃな鳥だ」 よく見ると、メジロが蜜を吸いに来ているではありませんか。葉の陰に隠れたりして、せわしく動くのでなかなか姿を見つけられないのですが、どうも一羽ではなく、何羽も居そうです。子どもたちも桜の花の動きを目をこらして見つめています。お花見がメジロ探しになってしまいました。 「あっ、目のまわりが白いよ」 動きは激しいのですか、目のまわりの白ははっきりと分かります。 「目のまわりが白いから、メジロって言うんだよ。きっと、桜の蜜を吸いにきているんだね」 「へえ、そうなんだ」 「まさか、メジロに会えるなんて、びっくりだね」 目のまわりが白くて、驚いて目を見張っているようなので、メジロのことを「びっくりメジロ」なんていう人もいますが、今日は驚いて目を白黒させているのは、メジロを探し](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6596.jpg?w=690&h=489&ssl=1)
メジロ 満開になった桜に誘われて、校庭に出て桜をながめていた時です。 「あれ、桜の花が動いているよ」 ○○くんの指さす方を見ると、確かに風にしては変な動きをしています。 「あっ、ちっちゃな鳥だ」 よく見ると、メジロが蜜を吸いに来ているではありませんか。葉の陰に隠れたりして、せわしく動くのでなかなか姿を見つけられないのですが、どうも一羽ではなく、何羽も居そうです。子どもたちも桜の花の動きを目をこらして見つめています。お花見がメジロ探しになってしまいました。 「あっ、目のまわりが白いよ」 動きは激しいのですか、目のまわりの白ははっきりと分かります。 「目のまわりが白いから、メジロって言うんだよ。きっと、桜の蜜を吸いにきているんだね」 「へえ、そうなんだ」 「まさか、メジロに会えるなんて、びっくりだね」 目のまわりが白くて、驚いて目を見張っているようなので、メジロのことを「びっくりメジロ」なんていう人もいますが、今日は驚いて目を白黒させているのは、メジロを探し
![IMG_6601 交通安全教室 「トラックが来たよ。気をつけて」 「右見て左見て、もう一回右を見るんだよ」 「信号が青でも、曲がってくる車に気をつけて」 実際に外に出ての歩行練習です。交差点に立って次々にやってくる子どもたちが気になって、一人ずつに声をかけます。 『あれ?』 まだ、全員は通過してないと思うのですか、子どもたちの姿が見えません。 「あっ、良かった。先生だ」 振り向くと、反対側から○○君がやってきました。道を間違えてしまったらしく、しばらく街頭に立っている先生方に会わなかったせいでしょう、安堵の表情です。見るとその後ろから何人もが続いてやってきます。しかも驚いたことに、だれからも声をかけられず自分たちだけで歩いてきたせいでしょうか。真剣に歩行の仕方を気にしながら歩いてきます。自分の声のかけ過ぎを反省していると、 「先生、ぼく、道を間違えちゃったのかなあ」 「大丈夫。ここを渡って、後は真っ直ぐだよ」 それにうなずくと、にっこりとして、右左右と確認して渡っていきました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6601.jpg?w=390&h=273&ssl=1)
交通安全教室 「トラックが来たよ。気をつけて」 「右見て左見て、もう一回右を見るんだよ」 「信号が青でも、曲がってくる車に気をつけて」 実際に外に出ての歩行練習です。交差点に立って次々にやってくる子どもたちが気になって、一人ずつに声をかけます。 『あれ?』 まだ、全員は通過してないと思うのですか、子どもたちの姿が見えません。 「あっ、良かった。先生だ」 振り向くと、反対側から○○君がやってきました。道を間違えてしまったらしく、しばらく街頭に立っている先生方に会わなかったせいでしょう、安堵の表情です。見るとその後ろから何人もが続いてやってきます。しかも驚いたことに、だれからも声をかけられず自分たちだけで歩いてきたせいでしょうか。真剣に歩行の仕方を気にしながら歩いてきます。自分の声のかけ過ぎを反省していると、 「先生、ぼく、道を間違えちゃったのかなあ」 「大丈夫。ここを渡って、後は真っ直ぐだよ」 それにうなずくと、にっこりとして、右左右と確認して渡っていきました。
![IMG_6603 タンポポの綿毛 「あっ、綿毛」 男の子がタンポポの綿毛を見つけると、ふーっと息を吹きかけました。綿毛はふわりと飛び立ちました。それを見ていたまわりの子どもたちも、次々と綿毛のついたタンポポを摘んで飛ばし始めました。沢山採って一気に吹いたり、友達同士吹きかけあったり………。 「ああっ、もう少し」 「もっと、ふーって勢いよく」 見ると何人かの子が、一回の息ですべての綿毛を飛ばせるかを競っています。 「わかった、見てて」 息を胸一杯に吸い込んで、ふーーーーっ。 「やった」 綿毛が舞い上がりました。調度吹いてきた風に乗ったのでしょうか。青空に吸い込まれていくようです。 「○○ちゃんの吹いた種、どこまで行くのかな」 「遠くまで行ってほしいね」 しばらくその行方を追っている子ども達です。きっと、空を飛んで辿り着いたところに芽吹いて花を咲かせるのでしょう。そう言えば、一回ですべての綿毛を吹き飛ばすことが出来たら、願いがかなうという占いもあるそうです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6603.jpg?w=390&h=212&ssl=1)
タンポポの綿毛 「あっ、綿毛」 男の子がタンポポの綿毛を見つけると、ふーっと息を吹きかけました。綿毛はふわりと飛び立ちました。それを見ていたまわりの子どもたちも、次々と綿毛のついたタンポポを摘んで飛ばし始めました。沢山採って一気に吹いたり、友達同士吹きかけあったり………。 「ああっ、もう少し」 「もっと、ふーって勢いよく」 見ると何人かの子が、一回の息ですべての綿毛を飛ばせるかを競っています。 「わかった、見てて」 息を胸一杯に吸い込んで、ふーーーーっ。 「やった」 綿毛が舞い上がりました。調度吹いてきた風に乗ったのでしょうか。青空に吸い込まれていくようです。 「○○ちゃんの吹いた種、どこまで行くのかな」 「遠くまで行ってほしいね」 しばらくその行方を追っている子ども達です。きっと、空を飛んで辿り着いたところに芽吹いて花を咲かせるのでしょう。そう言えば、一回ですべての綿毛を吹き飛ばすことが出来たら、願いがかなうという占いもあるそうです。
![IMG_6609 朝 顔 「先生、朝顔の芽が出たよ」 「私のも、三つも出てきたよ」 「それは、良かったね。みんな毎日水をあげていたから」 朝顔の種をまいてから、いつ芽を出すかと待っていた朝顔の芽が、ついに土の中から顔を出しました。登校してきた子どもたちは、早速朝顔の植木鉢の前に集まってのぞき込んでいます。子どもたちに呼ばれて、私も外に出て行きました。 鉢を見ると、ほとんど全ての鉢で芽が出ているのですが、ひとつだけ○○さんの鉢の朝顔は顔を出していないようです。○○さんはどこだろうかと探してみると、よろこんでいるお友達に笑顔で話かけています。そう言えば毎朝、真っ先に朝顔の水やりをし、自分の分ばかりでなく友達の分までも水やりをそっとしてくれていたのはその○○さんでした。あらためて、○○さんの鉢をよく見てみましたが、芽が出てきそうな気配は、どうもありません。 次の朝、子どもたちが登校する前に、朝顔の鉢のところに行ってみました。『やったね』○○さんの鉢の土が少し盛り上がっています。しかも二ヶ所もです。○○さんの笑顔が思い浮かんできました。時計を見るともうすぐ校門が開きそうな時間です。ちょっと慌てて教室に戻りました。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6609.jpg?w=193&h=275&ssl=1)
朝 顔 「先生、朝顔の芽が出たよ」 「私のも、三つも出てきたよ」 「それは、良かったね。みんな毎日水をあげていたから」 朝顔の種をまいてから、いつ芽を出すかと待っていた朝顔の芽が、ついに土の中から顔を出しました。登校してきた子どもたちは、早速朝顔の植木鉢の前に集まってのぞき込んでいます。子どもたちに呼ばれて、私も外に出て行きました。 鉢を見ると、ほとんど全ての鉢で芽が出ているのですが、ひとつだけ○○さんの鉢の朝顔は顔を出していないようです。○○さんはどこだろうかと探してみると、よろこんでいるお友達に笑顔で話かけています。そう言えば毎朝、真っ先に朝顔の水やりをし、自分の分ばかりでなく友達の分までも水やりをそっとしてくれていたのはその○○さんでした。あらためて、○○さんの鉢をよく見てみましたが、芽が出てきそうな気配は、どうもありません。 次の朝、子どもたちが登校する前に、朝顔の鉢のところに行ってみました。『やったね』○○さんの鉢の土が少し盛り上がっています。しかも二ヶ所もです。○○さんの笑顔が思い浮かんできました。時計を見るともうすぐ校門が開きそうな時間です。ちょっと慌てて教室に戻りました。
![IMG_6608 夕立 「先生、帰りの会早く終わらせてね」 しょうた君が話しかけてきました。 「どうして」 「西高のお姉さんに傘を返さなくちゃいけないんだよ」 「どういうこと」 「昨日、学校帰りに夕立があったでしょう。あいちゃんとめぐみちゃんと一緒だったんだけど、『うそっ、傘持ってない』って三人とも雨降るなんて思ってなかったし、家まではまだあるし、困って、途中のバス停に飛び込んだんだ。でも、なかなか止みそうもないので、『もう濡れてもいい』って飛び出そうとしたら、後ろからにゅーて傘を持った白い手が伸びてきて『この傘貸してあげるよ、一本だけど』って西高のお姉さんが貸してくれたんだ。それで三人でその傘の中に入って帰ったんだ。三人だったから俺は少しおしりが濡れちゃったけどね。そのお姉さんにバス停で傘を返すように玄関であいちゃんとめぐみちゃんが待っているんだ」 「何時に待ち合わせなの」 「ええとね、三時半」 「大丈夫だよ。その時間には終わりにするね。やさしいお姉さんだね、しっかりお礼言わなきゃあ」 「うん、もちろん」 「さようなら」 帰りの挨拶が終わって、頭を上げるとしょうた君はすでに教室を飛び出すところでした。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6608.jpg?w=192&h=275&ssl=1)
夕立 「先生、帰りの会早く終わらせてね」 しょうた君が話しかけてきました。 「どうして」 「西高のお姉さんに傘を返さなくちゃいけないんだよ」 「どういうこと」 「昨日、学校帰りに夕立があったでしょう。あいちゃんとめぐみちゃんと一緒だったんだけど、『うそっ、傘持ってない』って三人とも雨降るなんて思ってなかったし、家まではまだあるし、困って、途中のバス停に飛び込んだんだ。でも、なかなか止みそうもないので、『もう濡れてもいい』って飛び出そうとしたら、後ろからにゅーて傘を持った白い手が伸びてきて『この傘貸してあげるよ、一本だけど』って西高のお姉さんが貸してくれたんだ。それで三人でその傘の中に入って帰ったんだ。三人だったから俺は少しおしりが濡れちゃったけどね。そのお姉さんにバス停で傘を返すように玄関であいちゃんとめぐみちゃんが待っているんだ」 「何時に待ち合わせなの」 「ええとね、三時半」 「大丈夫だよ。その時間には終わりにするね。やさしいお姉さんだね、しっかりお礼言わなきゃあ」 「うん、もちろん」 「さようなら」 帰りの挨拶が終わって、頭を上げるとしょうた君はすでに教室を飛び出すところでした。
![IMG_6597 おはようございます 「おはようございます」 元気な声がしました。振り返ると大きなランドセルを背負った一年生が、挨拶をしながら学校前の横断歩道を渡ってくるところです。 「おはよう、いい挨拶だね」 「だって、先生が『一年生は学校に来る時、会った人には元気に挨拶するんだよ』って言ってたんだもの」 「そうかあ」 初めてのことで慣れないことばかりなのに、一生懸命に担任の先生の言うことを守ろうと頑張っている姿を感心して見送りました。 「いいなあ、俺も小学校に戻りてえなあ」 一年生の後に横断歩道を渡ってきた高校生が、友達に話しかけています。 「いいでしょ。いつでも戻っておいでよ」 私が声をかけると、 「えっ、そうてすか」 にっこりしながら高校生が通り過ぎていきました。 希望に満ち溢れた、はつらつとした一年生の姿は、周りの人たちにもなんとも微笑ましく感じられているようです。](https://i0.wp.com/eiichiurano.com/wp-content/uploads/2018/07/img_6597.jpg?w=356&h=275&ssl=1)
おはようございます 「おはようございます」 元気な声がしました。振り返ると大きなランドセルを背負った一年生が、挨拶をしながら学校前の横断歩道を渡ってくるところです。 「おはよう、いい挨拶だね」 「だって、先生が『一年生は学校に来る時、会った人には元気に挨拶するんだよ』って言ってたんだもの」 「そうかあ」 初めてのことで慣れないことばかりなのに、一生懸命に担任の先生の言うことを守ろうと頑張っている姿を感心して見送りました。 「いいなあ、俺も小学校に戻りてえなあ」 一年生の後に横断歩道を渡ってきた高校生が、友達に話しかけています。 「いいでしょ。いつでも戻っておいでよ」 私が声をかけると、 「えっ、そうてすか」 にっこりしながら高校生が通り過ぎていきました。 希望に満ち溢れた、はつらつとした一年生の姿は、周りの人たちにもなんとも微笑ましく感じられているようです。